CIDPによる気持ちの変化について、患者さんに聞いてみました
CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)の症状と向き合ううちに、暗い気持ちになってしまうこともあるかもしれません。このような気持ちの浮き沈みに対してどのように対処すればよいか、他のCIDP患者さんに体験談をうかがいました。
CIDPのような慢性の自己免疫疾患を抱えた生活では、症状や重症度が変わるたびに自分の気持ちや自尊心も浮き沈みすることがあります。こうした感情は、自分の心や体がどう反応するかわからない、治療によってどのような反応が起きるかわからない、ライフスタイルの変化にどう対応してよいかわからない、将来何が待ち受けているかわからない……そういった「わからない」ことと関係しているかもしれません。
「ご自身の体を思うように動かせなくなることに動揺される患者さんが多いです。」
臨床カウンセラーであるキャスリーンさんは、CIDPに伴う生活の変化が本人の自尊心に影響を与えたり、身体が自由にならないことにショックを受けるケースは少なくないと言います。
自らも希少な自己免疫疾患を抱えながら、患者さんにカウンセリングを行っているキャスリーンさんは、診断を受けてから自分に降りかかってきた様々な感情をよく覚えています。それは怒り、孤独感、無力感、裏切られたような思いなど、とても複雑なものでした。
「私が接する中では、ご自身の体を思うように動かせなくなることに動揺される患者さんが多いです。自分の何かが間違っていたかもしれない、人生が思い通りにならなくなってしまったと感じていたりもします」。
変化を受け入れる
CIDPでは、手足の筋力低下や歩行障害、物を持ち上げられない、疲れやすいなどの症状がよく見られます。
また、CIDPと診断されたことで、自己意識が劇的に変化した人もいます。長年、ダンサー兼振付師として活躍してきたスコットさんは、2015年にCIDPの診断を受けたことをきっかけに作家になりました。自尊心と生活の質を保つためには、CIDPと診断されたことと、CIDPによって起こる困難を受け入れなければならないと気付いたのです。
「自分自身の一番の助けになったのは、逃げ出すのではなく、CIDPを受け入れる気持ちです。『これも自分の一部。これが今の自分の人生の一部。この事実と向き合わなければならない。これを乗り越えて成長するんだ』。一度そう言えたから、今があります。」
「僕の気持ちを突き動かしたものが何であるかはわかりませんが、あるとき『作家になれ』と言われたように思いました。実際に作家になり、今は2作の小説を書いています。私の短編小説のうち3作が出版されることになりました。物事は常に変化していくのが人生なんだということを実感しています。」
気持ちを軽くするために
母親、学生、モデルとして活躍するケイトリンさんは、2019年から体に違和感を感じるようになり、2020年にCIDPの診断を受けました。元気を保つために毎日、自分のための時間を取っています。「自分のために毎日やっているのは、太陽の下に座り、肌で光を浴びること。一緒に新鮮な空気を吸うこともできますし、気持ちが軽くなります。うまくいかない日も、毎日自分自身で気持ち良くいられるように心がけています。」
セルフケアは誰にとっても大切ですが、ケイトリンさんにとってのセルフケアは、美顔パックや熱いお風呂でリラックスする以上のものなのです。
「心と身体の健康だけでなく、気持ちを整えることも重要です」
自分が心地よいと感じることに積極的に取り組むことは、悲しみや不満の気持ちを抑える助けになります。物書きでもセルフケアでも、愛する人との時間でも、何でもいいので気持ちのバランスを保ち、気持ちを軽くする活動を取り入れると、気持ちが軽くなるかもしれません。
頼れるサポートを整える
自分で気持ちを明るくする努力をするだけでなく、治療生活をサポートしてくれる体制が整っていると、いざというときの安心につながります。
スコットさんはCIDPという病気や、CIDPが自分に与えている影響が時に家族に理解されていないことに気付きました。だからこそ、自分の気持ちや自分のできること、困っていることを正直に伝えることが大切であることを実感しています。
「サポートしてくれている人には、いま困っていることやしたいことを具体的に伝える必要があります。内容の大小にかかわらず、今自分に何が起きているのか常に状況を伝えることが大切です。でなければ助けようがないし、支えてくれる人たちを驚かせたくはないですからね」とスコットさんは話します。
サポートしてくれている人たちはCIDP患者さんのライフスタイルに合わせることになりますが、サポーター側もCIDP症状を詳しく知ることによって、有意義な提案や前向きな工夫をすることができます。
「あなたが喜びの中で生き続けたいと願うなら、どんなに小さなことでも闘う価値があると気付くでしょう。」
ちょっとしたことを楽しむ
CIDP患者さんの中には感情の浮き沈みをコントロールするのが難しいと思う人もいるでしょう。
ケイトリンさんは小さな物事に喜びを見つけることが日々の支えであると打ち明けます。
「自宅で、目の前のことを一つひとつこなしていきます。毎日やっている一番大きなことは、人生を夢見ること。受賞映画作品の主役になったつもりで、すべてがうまくいくと想像します」
「私にとって前向きな気持ちを失わないことが大切なんです。あなたが喜びの中で生き続けたいと願うなら、どんなに小さなことでも闘う価値があると気付くでしょう。」
JP-VDJMG-24-00087(2024年10月作成)