Voice ― CIDPと生きる私たちの声

テニスや自転車など、外に出てアクティブに体を動かすことが大好きだった小林さん。ある日、走っている際に違和感を覚えてから、日に日に足の痺れと感覚麻痺が進行していきます。

治療とリハビリにより現在は以前と変わらない日常生活を送れるようになった小林さんに当時の心境と体験を伺いました。

最初の違和感からわずか2カ月で休職をする事態に

走っているときの違和感が病気に気づいたきっかけでした。

2021年2月、小林さんはスポーツジムのランニングマシンを使用中、平衡感覚に違和感を覚えました。最初はもともとあった霜焼けが原因で足が痺れているのかと思い、皮膚科に行ったそうです。霜焼けはすぐに治ったものの、足の痺れはその後もどんどん広がり強くなっていきました。

「以前から頸椎ヘルニアの症状もあったので、腰にもその影響がでたのかもしれない」そう考え次は整形外科へ。ヘルニアの疑いという診断が出たため、コルセットを巻いて過ごしていましたが、よくなるどころか症状は進行していきます。

「他の病気ではないのか」と不安になり別の整形外科に行きますが病名はわかりません。

どの診療科へ行けばいいのか悩みつつ、大きな総合病院を受診したときには、膝まで痺れが広がっていました。結局その病院でも病名を特定することができず、最終的に地域最大の総合病院を紹介され、様々な検査を経て2021年4月、小林さんはやっと「CIDPの疑いあり」と診断されます。この頃には仕事を休職せざるを得ない状態にまでなっていたそうです。

やっと病名がわかってむしろホッとした気持ちに

入院する前日は、歩くのも一苦労でした。夜、トイレに行くのにも壁をつたうように移動しなければならないほど。体の麻痺の進行が早く、入院中に腰まで感覚がない状態に陥ります。

「痛くはないので、寝ていれば何とかなるかなとも思いましたが、握力が半分ぐらいになり、お風呂にひとりでは入れませんでした。一番辛かったのは、排便の際に便が出ている感覚がなく『この先どうなるのだろう』、『家族に迷惑をかけてしまうのでは』と非常に不安になりました」。

その後、検査の結果が出て、ようやく確定診断に至りました。ちょうど、小林さんがインターネットで病名をいろいろと調べていた時期でした。

「当時はすぐにでも余命宣告を受けるのではと覚悟をしていたので、CIDPだと病名がわかり、治療もできると知って安心しました」。

不安を取り除いてくれた家族に今でも感謝

-CIDP患者、小林さん

CIDPは一生付き合っていく可能性のある病気です。小林さんは、仕事が続けられるのかという不安をまず感じました。しかし家族は、「先のことはどうにかなるから、無心で今のことだけ考えていればいいよ」と励ましてくれて、とても救われた気持ちになったそうです。

「安心して、リハビリや治療に専念できてありがたかったです」。

リハビリと治療の成果で現在は日常生活を取り戻した

最初は治療をしても歩くことが出来ず、車椅子での退院となりました。しかし、友人から「宇宙飛行士だって無重力空間から戻った直後は歩けないし、リハビリをするものだよ」と励まされました。

「筋力をつければ、薬が効いているのがわかるかもしれないという友人の言葉を糧に、毎日少しずつ歩く練習を始めました。おかげで1カ月後には、自力で歩けるくらいに回復しました」。

仕事仲間は声をかけてくれる
その心遣いに感謝

-CIDP患者、小林さん

入院前後の2カ月半ほど休職をしましたが、入院とリハビリを経て仕事に復帰し、それ以降は、通常の業務を行っています。

「私がちょっとでも具合の悪そうな様子を見せると『大丈夫ですか』と周りの方がすぐに声をかけてくれます。皆さんが言葉に出さなくても、自分の負担にならないように気を遣ってくださるのを実感しています」。

できることを探して、今を大切に楽しく生きる

「主治医は言葉数の少ない方ですが、的確に要点をついて説明してくださるので、安心して治療に臨んでいます」。

今は外来で治療を継続している小林さん。毎月通っていると看護師さんとも顔なじみになってコミュニケーションもスムーズになり、心情的にも支えてもらっているそうです。

「CIDPはいつ再発するのかもわからない病気です。再発したら、同じ治療では効かない場合もあります。でも先の心配をして怖がりながら生きるよりも、いい意味で開き直って、今を感謝しながら明るく生きることが私のゴールだと思っています」。

紹介した発症、診断の経緯および症状は個人の経験に基づいたものであり、全ての方が同様の経過をたどるわけではありません

 

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