Voice ― CIDPと生きる私たちの声

池崎さんがCIDPを発症したのは、高校受験を控えた中学3年生の12月の事でした。特に上半身に強く症状が出たそうです。その後、高校や大学への進学、就職といった節目ごとに、周囲の無理解に悩みつつも、自分自身で新しい道を切り開いてきました。現在は仕事に育児にと忙しい日々を送っていますが、情報発信を通してCIDPを含む難病の理解を広める活動も継続しています。池崎さんの行動力の源を伺いました。

CIDPの辛さを上手く伝えられなかった思春期

CIDPの確定診断が出たのは池崎さんが高校に入学して6月になった頃でした。

「私の場合、腕の症状がすごく強くて、文字が書けなくなったり、着替えができなかったり、食事も自分では取れなくなりました。フォークで食べ物を刺して、その手をもう片方の手で支えて食べるといったことが何とかできるぐらいで、身の回りのことが自分では全然できなくなり、とても辛かったです」。

足にも症状が出ていました。椅子から立ち上がることは何とかできましたが、歩くためには杖が必要で、自分ひとりでは移動の制限もあり、トイレに行くなど日常生活の中で行う動作も難しくなり苦労しました。

高校に入学してすぐに入院生活を送った池崎さん。退院後も体力が追い付かずに、半日だけ登校し、半日は早退する日々が続いていました。

「新しい友だちに病気のことを伝えようとしても、温度感のようなものが全然わからなくて・・・ 『ニューロパチーってなんか可愛いね』とカジュアルに言われたこともありました」。

CIDPは見た目には分かりにくくまわりの人から理解してもらうのが難しい病気なので、自分を守る意味で「ちょっと体が弱いんだよね』と始めは軽く伝えるようにしていたそうです。「でも、本当は分かってほしかったので、葛藤を抱えながらのコミュニケーションに試行錯誤していましたね」。

大学生になり自立、いろいろな気づきを得て変われたこと

学校まで親が車で送ってくれることに対して難色を示されたり、体育を欠席するためには膨大な量のレポートなどが必要だったりと、高校時代は病気に対する学校の配慮が十分ではなく、大変だったそうです。

大学に入学後、病気と向き合うターニングポイントがいくつかありました。

「まず一人暮らしを始めて、自分で何でもすることが自立ではないのだと知りました。いろいろなサービスや人に頼ってやっていくことも自立だと学べたことが一番大きかったですね」。

さらに男女共同参画推進センターのインターンに参加した際も大きな気づきを得たそうです。そこで出会った方々の中には、病気やハンディキャップなど社会的にはネガティブだとされる経験を生かし起業する人もいて、病気でさえ見方によってはポジティブな経験と捉えることができることを初めて知りました。

 慢性疾患セルフマネジメントプログラムのワークショップにも参加し、主治医とのコミュニケーションや運動、食事など生活全般について学ぶ機会も得られたそうです。

自ら情報発信をしてCIDPに対する理解を広げていく

就職活動を始めたときは、いろいろな相談窓口に行きました。しかし、難病を持つ新卒者に対する包括的な就職サービスはあまりなかったと言います。時には、「体を鍛えればいいのでは」というCIDPに対する無理解から発せられた言葉に傷ついたこともありました。そこで、自分でできる活動を通して、現状を変えていこうと決意しました。

「就職活動をした際、難病を持っている方はどのように就活をしたのか、どのように働いているのかという情報があまりありませんでした。そこで、就職活動をしながら、企業に向けて難病を持っていても働けることを情報発信するようにしました」。

その後、池崎さんは病院に就職したのち、現在は患者支援団体でさまざまな活動をするとともに結婚してお子さんにも恵まれました。

当事者や家族、支援者が気軽に集まれる場を提供

-CIDP患者、池崎さん

池崎さんは、若い人をだけを集めて難病と社会問題について考える会議を開いたり、YouTubeを通して情報発信したりといった活動を続けています。

「正直なところ、15歳の身に降りかかった問題としては理不尽すぎると未だに思っています。だからこそ、この経験を何かに生かさなければという思いがあって活動を続けています。自分自身のゴールは普通の生活ができること。病気があっても当たり前に子育てや仕事ができて、生活できることがゴールです」。

紹介した発症、診断の経緯および症状は個人の経験に基づいたものであり、全ての方が同様の経過をたどるわけではありません

 

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